天日海塩について

医学博士・理学博士 河木 成一 病気に効く「天然塩」健康法

よく読んでにゃん

過去にも天然塩のブームはありました。

このコロナ禍、緊急事態宣言の影響により、天然塩に興味を持つ方が非常に増えたのは事実です。

天日海塩においては、生産が間に合わなくなりました。
前代未聞でした。

ピンチはチャンス!
コロナ禍で大変ですが、天然塩の良さに、気付いてくれるチャンスを頂ました。

すでに廃盤となっていますが、

大切な はじめに だけをを引用しております。

本書には、このように書かれていますが

製造、輸入、卸売り業については、登録、または届け出だ

けでできるようになり、その届け出などは、財務省です。

塩需給の見通しとして、天日海塩の生産者の大城さんに、毎年、財務省に需給調査を提出し

ていることを教えてもらいました。

今でも、財務省が管轄しているということは、大切なものの証だと、私は思います

今までのお塩の歴史や、製法、なぜ天然塩なのか

もしかすると、あなたの考え方はかわるかもしれません

 

病気に効く「天然塩」健康法
医学博士・理学博士 河木 成一

 

はじめに

本書は、平成五年に刊行した『塩で万病を治す』の改訂版です。
人間の体にとって塩は必要不可欠なもの。摂取しなければ死を招きます。それゆえ、古代の人々は塩を得るため、〃塩の道〃と呼ばれる交易ルートを確保したり、地域によっては塩が貨幣の役割を果たしたりしていました。ちなみにサラリーマンの語源はラテン語の〃Salariumu〃(塩の)。塩を買うために支払われたお金をサラリーと言い、それがお給料の意味に変化していったとされています。
日本でも戦国時代に上杉謙信がライバルである武田信玄に塩を送った話が有名です。海に面した越後の上杉謙信は、領地に海がなく敵に塩の道を封鎖された甲斐の武田信玄に塩を送って窮地を助けました。
まさに、古今東西、塩の有無は死活問題だったのです。
ところが、二一世紀を迎えた今、塩は悪役となっています。スナック菓子や味噌、醤油、梅干し、干物、漬物などさまざまな食品が「塩分控え目!」というコピーを全面に出し、まるで塩分は健康の敵、塩分を摂らないことが、健康につながると言われんばかりです。
CMばかり責めるわけにはいきません。医師や医療機関も、高血圧や糖尿病を始めとする生活習慣病を予防するには、減塩の食生活が必要であると主張しています。医療機関が減塩を勧め、マスコミがその主張を伝えるのですから、一般の人たちが塩分を控えようと考えるのは当然でしょう。塩分たっぷりの料理は、健康に無関心な人、知識のない人が食べると言った風潮です。だからこそ、食品メーカーも「塩分控え目!」をアピールせざるを得ません。
しかし、塩の摂りすぎは本当に悪いことなのでしょうか?
私は声を大にして「それはえん罪だ!」と言いたいと思います。
最初に述べた通り、塩は人間の体に不可欠なもの。人体の血液、胃液、細胞内には塩が含まれていて、組織内の浸透圧を調整しています。人体から塩分がなくなれば、液体のバランスが崩れて死を招きます。また、塩分が長期にわたって欠乏すると、消化液の分泌減退、食欲減退、疲労などを引き起こします。
そのほか、塩には腐敗を止め、化膿を防ぎ、悪臭を消す作用もあります。そのため、塩は昔からの不浄のものを清めるためにも使われてきました。今でも、葬儀から帰った時に体に振りかけますし、大相撲では力士が取り組む前に土俵にまいて清めます。つまり、塩には不浄のもの、体に悪いものから身を守ってくれる力があると考えられてきたのです。
塩が生命の維持に必要なのは、人間だけでなく動物も同じです。私が塩を持って牧場に行くと馬が駆け寄ってきます。本能的に塩の大切さを知っているからです。塩分の不足した鹿が人里の小便壺に近づく習性を利用した捕獲法があるのもうなづけます。
このように生命の維持に大切な塩ですが、実は、天然塩であってこそ、その役割を果たせるのです。現在、大量に流通している科学製法で作られた塩の成分は天然の成分とは違っています。本来の塩と違う科学塩を、日常的に摂っていては体に良いわけがありません。つまり、塩を控えなくてはいけないのではなく、科学塩を控えなければいけないのです。天然の塩にとって〃減塩の薦め〃は濡れ衣と言えます。
では、なぜ科学塩が大量に流通しているのでしょうか?
日本では昭和四七年に塩業近代化臨海措置法が制定され、それまでは全国に二七カ所あった塩田をすべて閉鎖。イオン交換樹脂膜製法という科学製法に転換されました。
イオン交換樹脂膜製法に全面転換した理由は次の通りです。
①生産価格を抑え、販売価格を安定させる
②大量生産が可能
③日本の塩の自給を守る
④純度を高める
イオン交換樹脂膜製法は、海水を石油系の物質で作った半透明膜(イオン交換樹脂膜)を通過させて、直流電流を流し、ナトリウムイオン、塩素イオンを分解して集め、塩水を濃縮して製造する方法です。この方法では九九・五%が塩化ナトリウムという高純度の塩を生産できます。
しかし、天然塩に含まれているミネラル類はほとんどありません。塩の中にミネラル類が含まれていないと、体液の流れを正常に保つために重要なイオン濃度などのバランスが崩れてしまいます。血漿中のナトリウム濃度と、赤血球中のカリウム濃度のバランスが取れてはじめて健康を維持できるのです。科学塩を摂り過ぎると、血漿中のナトリウム濃度が異常に高くなったり、アレルギー性疾患や生活習慣病にかかりやすくなったりします。
このように、科学塩ばかり日常的に使っていたら確実に体を蝕んでいきます。もともと塩は体を支えるエネルギー源だったのに、今では病気の原因になってしまっているのです。
イオン交換樹脂膜法に比べ、昭和四七年の塩業近代化臨海措置法が施行されるで、何百年と続いてきた塩田方式は、自然の恵みである塩を自然の力を借りて作る方法でした。
日本の塩田は独自の発達をしてきました。古代の天然の干潟を利用した素朴なものから、中世になると海水を汲み上げる揚浜式へ。江戸時代には遠浅の海岸に堤防を築き、潮の満ち干を利用して海水を導く入浜式が考案され、地形的に適した瀬戸内海沿岸に製塩業が集中しました。昭和二〇年代には地盤に傾斜をつける流下式塩田が開発されました。
塩田に海水を取り入れた後は、太陽熱と風で水分を蒸発させて〃かん水〃を作り、煮詰めて塩にします。煮詰める釜は、奈良、平安時代には竹と粘土でできた釜を使い、やがて石釜になり、明治時代には鉄の平釜、大正時代には蒸気利用式、昭和になって真空式が登場しました。
明治時代に安価な外国塩が輸入され始めたのを機に、国内の塩の保護と国庫収入の増収のために、明治三八年に塩の専売制度が制定されました。以降、塩の製造、輸入、販売は旧・専売公社社(現・日本たばこ産業=JT)の指定を受けなければできなくなったのです。
しかし、専売制度はできましたが、伝統的な塩田による製法は続いていました。ところが、昭和四七年に塩田を閉鎖し、すべてイオン交換樹脂製法に切り替えるという暴挙のため、以後日本国中に科学塩が蔓延していったのです。そして、生活習慣病の増加や健康志向の高まりから減塩ブームとなり、塩は悪役になってしまいました。
「塩足らず」という言葉は、調理する時に塩が足りないと間の抜けた味になってしまうことから、能力が低い人のことを指すようになったとか。まさに、間違った減塩生活のために、〃塩なし人間〃となり、病気になってしまう人が増えてしまったのです。
私はこのような状況に危機感をもち、平成五年に前著『塩で万病を治す』(現代書林刊)を著しました。誤った減塩信仰に警鐘を鳴らし、健康にも美容にも力を発揮する天然塩の良さを知って欲しいという、やむにやまれない気持ちでした。
そして発売されるや想像以上の反響が起こりました。天然塩への関心が高まるとともに、私が提唱した、塩入浴法や塩ダイエット、塩エステがテレビや雑誌などで取り上げられ、ブームとなったのです。当時、インタビューを受けた出版社は三八社に上がりました。
さらに、経済のグローバル化により、金融自由化をはじめ規制撤廃の波が押し寄せてきました。塩も例外ではありません。平成九年四月一日に、九二年の長きにわたって続いてきた塩の専売制度が、ついに廃止されたのです。
新しい塩事業法のもとでは、製造、輸入(特定販売)、卸売業については登録または届け出だけでできるようになり、小売りは登録、届出の必要もありません。専売制度の撤廃により、市場には昔ながらの塩田方式やその他の方法によるミネラル豊富な天然塩がたくさん出回るようになりました。そのほか、岩塩や天日塩など世界各国から輸入されています。
世界の塩の生産量は約二億トン。岩塩や天日塩が多いと推定されています。
岩塩の採り方は二通りあります。一つは、石炭と同じように坑道を掘り、採塩し、搬出する乾式採鉱法。もう一つは、岩塩層まで井戸を掘り、パイプで淡水を注入し、岩塩を溶かし、塩水をポンプで汲み上げる溶解採取法です。
天日塩は、海水を貯水池、蒸発池、結晶池へと順次移しながら、太陽を風で水分を蒸発させ、塩を結晶させる方法で作られます。雨量が少なく、高温低湿、風があり、粘土質の地盤があり、流れ込む河川がないなど、地勢的条件が整っている地域で行われています。オーストラリア、メキシコ、中国、インド、カナダなどで、大規模な塩田があります。
このように、私たちの食卓に上る塩は化学塩一辺倒から一挙に種類が増えていきました。
そして、使ってみると、天然塩は美味しいということが実感できます。料理に一振りしても、おにぎりを結ぶ時につけても、科学塩とはひと味違います。漬け物も科学塩と天然塩では、引き出せる味が違うのです。私は、コーヒーやお酒にも一つまみの天然塩を入れて飲んでいます。隠し味となって、味が引き締まり、とても美味しくなります。
健康を意識して塩の成分が気になる人、塩エステなど肌に良い塩を求める人、グルメ志向で美味しい塩が欲しい人等々、塩に関心をもつ人が多くなりましたが、店頭にズラリと並ぶ塩の中からどれを選べばいいのか迷うようです。
産地、製法、成分、安全性、味など塩を選ぶ選択範囲が広がったのは、消費者として歓迎すべきことでしょう。それぞれの商品の特徴を把握して、選択していく時代になったのです。九〇年にもわたる専売制度が廃止され、まさに塩にとっては文明開化の時代を迎えたと言ってよいでしょう。
私のもとには前著を読みたい、塩のことをもっと知りたいという声が多く届いています。塩に興味を抱く人が増えたのはうれしい限りなのですが、前著を出版してから八年がたち、書店で手に入りにくくなってしまいました。そこで、このたび改訂新版を出すことにしました。改訂にあたっては、専売制度が廃止されて様々な種類の塩が販売されているので、巻末に商品情報をつけました。商品選びの参考にしていただければと思います。
ゲーテは「人は自然から遠ざかるほど病身に近づく」といいましたが、さまに自然は医です。大自然のもつ大海のエネルギーが含まれている天然塩こそ、万病を治す原点と言えます。
自然から離れ、電気や石油のエネルギーでできたものに囲まれて暮らしていれば、人間の体にひづみや歪みが出できていまうのもうなづけます。花粉症やアトピー性皮膚炎などアレルギー疾患は、その代表例と言えるのではないでしょうか。天然塩をはじめ自然に近づいた暮らしをすることが、健康を取り戻すことにつながるのではないでしょうか。
本書で詳しく説明していますが、塩入浴、塩エステ、塩ダイエットなど天然塩を使ってすぐできる健康法を実践しながら、元気な体を作りましょう。こうした毎日の小さな努力の積み重ねが、健康な体、美しい体を作るのには欠かせません。これぞ、真の予防医学と言えるのではないでしょうか。
天然塩の素晴らしいエネルギーが、二一世紀を生きる人々を心身共に健康にすることを心から願って。
平成一三年三月
河木 成一

血漿
けっ‐しょう〔‐シヤウ〕【血×漿】
読み方:けっしょう

血液で、血球を除いた液体成分。水分のほかたんぱく質・無機塩類・糖分・脂肪・窒素化合物などからなり、また、老廃物・ホルモン・抗体なども含む。細胞の浸透圧や水素イオンを一定に保つ働きをする。
デジタル大辞泉